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Vol.1 田中 希さんプロフィール
北海道ではまだ数名しかいないA・F・Tカラーデザイナーの一人。
環境、建築、インテリア、ファッション、メイク等、色に関わる全ての分野のカラーコーディネーションを積極的に行っている。事務所以外にもヒューマンアカデミーなどにおいて色彩講師を務め、カラーコーディネーターの育成にも精力的に活動。過去にNHK「ほくほくテレビ〜受験に合格する部屋作り大改造〜」や、HTB、UHB、HBCに出演。その他、パーソナルカラーの講演会を道内外で行っている。
■ 日本色彩学会会員■ NCD会員■ 財団法人日本色彩研究所認定色彩指導者■ A・F・T1級■ A・F・T認定カラーデザイナー■ 英国オーラソーマ社認定プラクティショナー■ NPO法人北海道カラーユニバーサルデザイン機構(北海道CUDO)理事■ 照明コンサルタント
ー田中さんは、環境や建築、インテリアなどの分野のカラーコーディネーションも多く手がけていますが、日本人の暮しにもっと色を取り込んで楽しむことをご提案されていますね。
田中 そうですね。例えば日本のマンションの場合、だいたい壁は白ですよね。多くの方の多様性にとりあえず叶うという意味で無難な白を使っている場合が多いと思うんです。そして住む方も壁をいかに白いまま保つかということに気を使いながら暮らしていますよね。ーヨーロッパにも何度も足を運ばれているようですが、向こうの内装に対する考え方は日本と違いますか?
田中 「ヨーロッパの建築は長い歴史があり、住宅そのものの寿命も長いので、そうそう建替えることもありません。だからインテリアにお金をかけたり、それを楽しむという文化が育ちます。以前フランスの一般家庭を訪ねたときも、そこのご主人が「この部屋は海をイメージしてコーディネートしたんだよ」とか「ここは森のイメージなんだ」とか嬉しそうにご案内していただきました。コンセプトは各部屋様々でも、それぞれの部屋はとても統一感を持って仕上げられているんです。それを見たときに、フランスの方は色を楽しんでいるなぁと思いました。日本人ももっと型破りに色を楽しんでいいただきたいですね。ー以前、TVの企画で「受験に合格する部屋作り」というものをご提案されたとお聞きしましたが。そのような短期的目標にもカラーコーディネーションは効果がありますか?
田中 そうですね。あの時は実際に受験を控えたお嬢様の部屋を改造したんですが、当初部屋の中にはモーニング娘のポスターが壁中に張り巡らされていて、採色したら276色もあったんです。それだけ色があると、気分が高揚して自然に勉強から逃げて遊びたい気分になってしまいます。ですから、ポスターを剥がしたり、小物類はロールカーテンで目隠ししたりして色をなるべく押さえました。ー大改装の結果はどうでしたか?
田中 後日お母様にお聞きしたら、本当に成績が上がったとおっしゃっていただきました。色というのは人の気分を切り替えるスイッチの役目をするんです。だからお子様に勉強に集中させたいときは、内装も8色以内に押さえることが理想だと私は思っていますー他に部屋の色などに起因する精神的作用はありますか?
田中 一般的な例で言えば、何かご商売をされていて、そこで商品を売りたいという場合は青いインテリアより赤いインテリアの方がいいと言いますね。青は冷静にさせる色なので、この商品いかがですか?と奨めても『ん〜ん一晩考えます』ってなってしまう。ところが内装が赤とかゴールド色だと気持ちが高揚して『自分は豊かなんじゃないか』という錯覚をさせる効果があるので『これいただくわ』となりやすいですね。また精神的に元気を取り戻したいのであれば、オレンジ系や黄色もいいといわれています。そういった精神的作用を考えるのであれば書店で色彩心理の本を買い求めて参考にされるのもいいでしょう。ただ、自分にとって居心地のいい色となると、実は人それぞれ違うんです。ー居心地のいい部屋造りを考えたとき、例えば壁の色などはどのように決めればいいんでしょう?
田中 一番は、そこに暮らすパートナー同士で好きな色、一番落ち着く色を探すことが大事だと思います。その手がかりになる方法もいくつかあります。ーどうしてですか?
田中 外から見ると、製紙工場の煙であったり曇り空の色であったりとか少し『陰』のイメージであっても、そこで育った方達にしてみると何とも居心地のいい色、その色に包まれて育ったという「風土色」なんです。この[風土色]というものが私たちの色の感覚を知らないうちに育てているんです。その「風土色」をインテリアに取り入れることも、やはり落ち着く部屋造りのヒントになりますね。ー壁は面積が広いので一色を決断するのに勇気がいりそうですね。ついつい無難な色に落ち着きそうな気がするのですが。
田中 具体的な壁の色の選択は、自分でトレーニングすることも大事です。例えば「今日は壁を見て歩こう」と決めて壁ばかり意識して見て歩くとかするとだんだん感性が磨かれて、自分にしっくりくる居心地のいい壁というのがわかってくると思います。そして自分でその塗ろうとする空間に立って、この壁は黄色が良いだろうか、緑がいいだろうかと、よく壁に語りかける。そしてひらめいた直感を信じるということもとても大事だと思います。ーお話しを伺って、色の世界の奥深さの一端に触れられた気がします。
田中 生活の中で色をもっとたくさんの人に楽しんでいただきたいですね。自分は何故この色に感応しているのかということを考えられるようになったらとても楽しいですよ。

田中さんが今、内装塗料として提案しているのが、土を原料とする自然顔料。「同じ強い色でも、ペンキから受ける波動と土から受ける波動とではまったく違う」という。ペンキではどうしても平面的で、そこに壁があるという感じになるが、自然塗料は深みがあり、表情がある。「塗り立ての時、壁が生きているようだと皆さんおっしゃいます」と田中さん。
構成/ 文:堀田正紀 写真:古田智紀